顔に馴染む、1mmの奇跡|第8回:鯖江のバネ性とフィッティングの現在地。素材の進化に甘んじない職人技
日本が誇るメガネの聖地・鯖江が生み出した「βチタン」などの超弾性素材。しかし、「バネが効いているから調整不要」というのは大きな誤解です。最先端の素材を、さらに完璧な掛け心地へと昇華させる最後の1mmの手仕事について紐解きます。
こんにちは、72eyeworksです。
メガネフィッティングの歴史を紐解く連載、第8回となる今回は、私たちの国が世界に誇る技術の結晶である**「弾性チタン素材」と、現代のフィッティングのリアル**に迫ります。
1980年代以降、日本の「鯖江(さばえ)」が世界のメガネ業界に革命を起こしました。しかし、その高機能な素材の登場は、私たち眼鏡技術者の仕事をなくすものではなく、むしろ「より高度なフィッティング」を要求するものだったのです。
鯖江が起こした世界革命「チタンフレーム」の登場
かつてメガネフレームの金属といえば、重い真鍮やニッケル合金、あるいは加工が難しいゴールド(金)が主流でした。そこに登場したのが、軽くて錆びず、アレルギーも起こさない金属「チタン」です。
- 世界初の純チタンフレーム: 1980年代、福井県鯖江市の職人たちが、加工が極めて困難とされたチタンのプレス・溶接技術を世界で初めて確立しました。
- βチタン(ベータチタン)への進化: さらにチタンに他の金属を絶妙に配合した「βチタン」や「形状記憶合金」が開発されます。バネのようにしなやかに曲がり、力を抜くと元の形にピタリと戻るこの素材は、メガネの掛け心地を劇的に変えました。
- 「調整不要」という最大の誤解: このしなやかなバネ性に注目したメーカーは、「誰の顔にも自動でフィットする調整不要のメガネ」を売り出しました。しかし、ここからフィッティングの新たな苦闘が始まります。
なぜ「柔らかいバネ素材」でも頭が痛くなるのか?
「こんなに柔らかく曲がるのに、夕方になるとこめかみがズキズキ痛む」「下を向くとやっぱりズレる」というお悩みを抱えて、当店へお越しになるお客様は少なくありません。バネ性のあるフレームでなぜこのようなことが起こるのでしょうか?
Q:バネ性のあるフレームなのに痛む・ズレる理由は何ですか?
A:バネは「元の形に戻ろうとする力(反発力)」を常に生み出し続けているからです。お顔の横幅よりも狭いフレームを無理に広げて掛けた場合、バネは1日中、こめかみを内側へ押し付け続けます。これが血流を滞らせ、頭痛の原因になります。また、お顔の凹凸(耳の後ろや鼻の角度)に合わせた「引っかかり」がないため、締め付けられているのに歩く振動でずるずると前に滑り落ちてしまうのです。
Q:ハイテク素材に対して、72eyeworksではどのような調整を行いますか?
A:私たちは、素材のバネ性に決して甘んじません。ベータチタンのようなしなやかな金属でも、ただ頭を挟み込むのではなく、耳の後ろの骨のくぼみに沿って「力を逃がすカーブ」と「優しく固定するポイント」を手作業で作り込みます。クリングスアーム(鼻パッドの足)も、バネの反発力が鼻頭の一点に集中しないよう、面でピッタリと乗る角度へミリ単位で調整します。
まとめ:素材の弾性と、プロの手仕事が融合して初めて生まれる「無重力」
現代のメガネ素材は間違いなく過去最高レベルに進化しています。しかし、その進化のバトンを最後に受け取り、お客様の骨格という「個性の凹凸」に着地させるのは、いつの時代も私たちフィッターの手仕事です。
優れた素材特性を100%引き出し、バネを「締め付け」ではなく「優しく包み込むホールド感」へと変える。それが、現代におけるフィッティング技術の極みです。
次回、第9回は**「日本の『おもてなし』が生んだミリ単位のフィッティング技術」**をお届けします。西洋の平坦なメガネを、日本人の複雑な頭部形状に適合させてきた国産フィッターたちの執念の歴史を語ります。どうぞお楽しみに!
📐 コンマ1mm of 調整で、メガネをもっと美しく。
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72eyeworks(セブンツーアイワークス)
北鴻巣駅東口から徒歩1分。鯖江が誇る極上のチタンフレームを、当店の「最後のミリ単位のフィッティング」で極上の無重力体験へ変えてみませんか?
