ストーリー|技術と感性の調和(レンズとフレームが結ばれる瞬間)

2025.11.08

第6話|技術と感性の調和(レンズとフレームが結ばれる瞬間)

北鴻巣駅東口から細い路地を抜けると、外とは別の時間が流れる小さな店がある。
72eyeworks(セブンツーアイワークス)。温かな光と、静かな工房の空気。
ここは、データという「技術」と、経験という「感性」が調和し、一本の眼鏡が生まれる場所。

会社経営者のキムラは、長年使っている強度数の遠近両用眼鏡に不満を抱えていた。

「見えることは見えるんです。
でも、視線を動かすとどうしても歪みが気になる。
特に階段の上り下りや、車線変更のときが怖くて。」

先日の精密測定で、キムラの視力データは完璧に出ていた。
しかし、店主が本当に大切にしているのは――その先だった。

店主は静かに問いかけた。
「最高の眼鏡づくりにおいて、技術と感性、どちらを磨くべきだと思いますか?」

提案されたのは、当店がニコンレンズウェアパートナーとして培った知見をもとに設計する、
最高級オーダーメイドレンズ。

「レンズは、フレームの形状やお顔の傾き、視線がレンズ中心からどれだけズレるか――
すべてを計算して設計されます。これが“技術”です。」

仕上げの工程に入ると、店主は新しいフレームにレンズを組み込み、慎重に最終フィッティングを始めた。
テンプルの角度をわずかに曲げ、鼻パッドの高さをミリ単位で調整する。
それは、どんな精密機械にも置き換えられない、職人の“感性”が宿る瞬間だった。

「技術が最高の設計図を描き、感性がそれを完璧に顔に結びつけます。
ほんのわずかな傾きで、遠近両用レンズ特有の歪み(収差)が劇的に変わるんです。」

キムラは、完成した眼鏡をゆっくりと顔にかけた。
そして、店内を歩きながら視線を上げ、下げ、左右に振った。
――揺れない。歪まない。
階段の段差も、照明の反射も、すべてが自然な距離でつながっている。

隣でアヤが、その様子をやさしく見守った。
「設計と仕上げは、オーケストラのようなもの。
技術(スコア)が完璧でも、感性(指揮)がなければ、人の心に響く音楽にはなりません。」

キムラは鏡の中の自分を見つめ、そっと眼鏡のフレームを指で撫でた。
その表情には、確かな自信と落ち着きが宿っていた。
眼鏡はもはや“道具”ではなく、彼の視界と生き方を支える、精巧な芸術品となっていた。


👓 使用モデル: STEADY(フレーム)+ NIKON カスタムメイド遠近両用レンズ
🛠 テーマ: レンズ設計の技術と、フィッティングの感性が結ぶ最終調整。

では、今日もよろしくお願いします。